日本木彫刻協会の主旨
日本の伝統木彫刻を後世に
日本は地理的要因から、日本固有とも言える他国には見られない独特の文化を築いてきました。山に恵まれていたことから遥か昔から木と親しみ、芸術の域に達したかつての日用品は伝統工芸と呼ばれ、その技術を今に伝えています。
しかし、この貴重な日本古来の伝統を受け継ぐ技術は衰微傾向にあり、その担い手も激減しています。
明治以降、積極的に西洋の文化・文明が取り入れられると、欧米化が進み民衆の目はこぞって真新しいものへと向けられました。その結果、瞬く間に日本の固有文化は淘汰されていきました。日常生活のほとんどが西洋化し、今では日本古来のものを思いつくのが難しいほどです。日本人の「価値観」もその中のひとつです。
こうした文化的価値観も欧米化すると、住宅事情の変化なども手伝って欄間をはじめとする昔の日本の家庭を彩ってきた木彫刻の需要は激減していきました。
その結果、古来私たちが親しんできた木彫刻の世間の認知度は下がり、いつしか「特別なもの」となりました。市民は親しむ機会がほとんど無くなり、社寺仏閣の装飾彫刻など一部だけがその姿を留めています。
こうした現状に危機感を覚え、「日本木彫刻協会」を設立いたしました。
千年以上の長い歴史を誇る伝統木彫刻の技術の保存、現代に木彫技術の継承者となっている作家の地位向上、そして何より職人として偉大な先人たちの技術と技に込めた思いを次世代に残していくこと―。これは、木彫刻に携わる職人として使命だと感じています。
近年、多方面で日本古来の知恵や技術が見直される機運にあります。ストレス社会から癒しを求め、木の魅力と相まって木彫刻も再評価されてきています。
効率と生産性を求める現代社会とは対極に位置するような世界ですが、心を込めて作る職人技にしかできないこと、見えない価値がそこにはあります。
私たち日本木彫刻協会は、この貴重な伝統技術の後世へ残し、日本人の心を伝える活動を目指していきます。
基本理念
1.作品の分野に制約を設けない公平な観点からの展覧会の開催
2.日本の木彫刻文化の保存と発展に寄与する
3.年齢や環境に関係なく木彫刻に親しんでいただく機会の提案
4.木彫刻を通した地域への社会貢献
5.日本の伝統技術である木彫刻を次世代に継承していく人材の育成
6.彫刻から学ぶモノを大切にする心、人間的な教育機会の実現
7.専門性を生かした新たな木彫刻の価値の創造
8.彫刻が脳に与える活性要素の学術的な側面からの研究活動
日本木彫刻協会の特色
木彫刻に対して公平な評価を行う協会
現在、日本の木彫刻業界を見渡すと「後継者不足」という大きな問題が見えてきます。その裏には長期間の修行生活を経て貴重な技術を身に付けて独立しても、生活ができなければ離職せざるを得ないという問題があります。
これは大きな原因のひとつに作品を公平な場で正しく判断してもらう機会に乏しいということが挙げられます。
諸問題の解決に向けて、木彫刻の普及に努め、あらゆる分野の木彫作品がより多くの方々に知っていただけるような機会を作っていきたいと考えています。
これからの木彫刻家の希望になるような活動を行う
木彫刻家にとって一般の方に知っていただく機会は、直接触れ合うことができる展覧会だと言えます。
ところが、今日催されている展覧会では、その出展分野に大きく制限があります。そのため、希少な分野に携わる作家や、或いは仏像彫刻などはこれら主流の公募展などからは除外されることも少なくありません。
この現状を打破し、木彫に関わる人々の希望となるような活動を目標とし、展覧会を行っていきます。
「スペシャルオリンピックス」などの活動を通じての社会貢献活動
私たちが木彫を通して社会に出来ることは、やはりその技術を生かすことです。自然と触れ合う機会・時間が少なくなる中、子供たちに親しんでもらう体験教室の開催なども重要な活動のひとつです。
また、知的発達障害者の方々にも彫刻をご指導させていただいています。こうした方々は普段刃物を持つ機会がほとんどありません。
しかし、その魅力を味わっていただくと手・指の運動や考える力、また集中力を養うことにも繋がり、5年間の活動の成果が大きく出て来ています。
そのため、親御様にも大変喜ばれ、私たちにとりましてもかけがえのない貴重な経験となっています。これからも、社会のニーズにお応えできる社会貢献活動を目指していきます。